『アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 前編』 スタッフ舞台挨拶オフィシャルレポート到着!

『アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 前編』が好評を博す中、2025年11月11日(火)にグランドシネマサンシャイン 池袋にて、スタッフ舞台挨拶が開催された。
この日は、本作に新たな息吹を吹き込んだ制作スタッフたちが登壇。別所誠人(監督/劇場総集編監修)、濱野高年(音響監督)、大寺文彦(録音調整)、下岡聡吉(企画プロデュース)の4名が、制作の舞台裏を語った。
本レポートでは、劇場ならではの音響へのこだわりや、総集編の構成の意図など、制作の舞台裏が明かされたイベントの模様をお届けする。
冒頭のあいさつでは、監督/劇場総集編監修を務めた別所は「IDOLiSH7の初ライブのように、スタッフ舞台挨拶で9人しか観客がいなかったらどうしよう」と不安だったことを明かし、客席を前に安心した様子で「大したおもてなしもできませんが……」と、丁寧に語りかけると、客席に和やかな笑顔が広がった。
進行を務めた企画プロデュースの下岡は、予想を上回る観客の多さに「緊張してしまって……」と言いつつも、軽快な口調で「今日は何月何日ですか?」と問いかけた。その意図をすぐに察した観客たちのテンションがあがる。
舞台挨拶当日の11月11日は、Re:vale・百の誕生日。合図とともに「百ちゃん! お誕生日おめでとう!」と声が響き渡ると、客席にはビビッドピンクのペンライトが灯り、大きな拍手が上がるなど、祝福ムードに包まれた。
続いて、下岡が「TVアニメは観ていないけれど、劇場総集編で初めて『アニナナ』に触れた方はいらっしゃいますか?」と問いかけると、少数ながら手が上がる。これには登壇者たちも驚きつつも、嬉しそうな表情に。『アイドリッシュセブン』の新たな入り口として、本作がしっかり受け入れられていることを実感した様子だった。
今回、TVアニメ1期を再構成した劇場総集編の制作にあたり、別所は以前SNSで「TVアニメ1期の全17話を観るのはハードルが高い」という声を見かけたことを引き合いに出し、「じゃあ総集編って、どう作ればいいんだろう?」と当時の戸惑いを語った。
音響監督の濱野も、劇場総集編の話を聞いた当初は戸惑ったという。TVアニメ1期を前後編に再構成するにあたり、そのまま切り貼りすると音のつながりに違和感が生じてしまう。しかし、それを組み直す大変な作業を「(録音調整の)大寺くんなら大丈夫!」と全幅の信頼を寄せたという。
当の本人である大寺は、当時を振り返り「普通に考えれば“すでに完成して放送された作品の、どこを直す必要があるんですか?”がスタートなんです」と笑みをこぼした。
それでも、調整指示が増えたのは、TVアニメ1期の制作から実質8年の歳月が過ぎ、また劇場で流すという前提もあり、できることが増えたためである。
通常、20分程度のTVアニメでも音響の調整には1時間ほどかかるが、本作は約100分の長編。加えて、別所・下岡・濱野らスタッフ陣から細かな要望が入り、そのすべてに応えるのは並大抵のことではない。
大寺曰く、「1期を超える音響を作るしかない」というプレッシャーが常にあったという。実際、大寺が一度提出した音響に対して、スタッフ陣からの要望メモは前編だけでA4用紙5〜6枚にも上り、1回の視聴で1人あたり20〜30箇所の修正が入っていたという。
5.1chサラウンドは2chとは異なり、音の分離や配置に高い精度が求められ、BGMは基本的に前方スピーカーから、セリフはキャラクターの立ち位置やシーンに応じて振り分けられている。また、ライブシーンでは、別所の要望で「観客の歓声は後ろから」「アイドルの歌は前から」という配置に。完成した音響を聴いた際、別所は「セリフと音楽のトラック数だけでギリギリ1,000には届かないくらい」と聞かされ、その数に驚いたという。
ここまで話が広がったあと、下岡が「【前編】はIDOLiSH7を軸に構成されていること」「総集編制作にあたって泣く泣くカットしたシーンはTVアニメ版を見てほしいこと」「【前編】はTVアニメ第8話までをまとめていること」に先に触れる予定だったのだが、あまりの盛り上がりにその話を差し込めなかったことを告白。会場からは笑いが起きたが、本作を何度も見返しているファンにとっては、こうした音響制作の舞台裏こそが貴重な話だったと言えるだろう。
本イベントでは、総集編の構成について、その制作過程も明かされた。初稿は製作委員会側が絵コンテをもとに2時間超の映像を構成。そこから4〜5回の調整を経て、別所に監修を依頼したという。
その後、別所が1〜2回ほど監修に入ってカットの入れ替えや尺調整を提案し、現在の構成に仕上がったそうだ。再構成がスムーズに進行した背景には、委員会チームの精度の高いたたき台の存在が大きかったようで、別所は、「ここまでシーンを絞り込んだ委員会チームはすごい」と感嘆。対して下岡も「別所さんは天才。このシーンはこう繋いでいいんだって勉強になりました」とお互いの手腕を称え合った。
さらに音響のコアな話題は続く。大寺が特にこだわったのは、TRIGGERの「SECRET NIGHT」で十 龍之介が漏らす「Ah」という吐息。会場に、この音声がお気に入りポイントに入っているかを尋ねると、満場一致で手が挙がった。この音声、劇場では座る位置によって音の聴こえ方が異なり、特に前方ではその吐息が官能的に響くのだという。5.1chサラウンドによる立体的な音響設計が、劇場で観ることの価値をさらに高めている。
また、音響チームのこだわりを実感できるのが、陸の夢の中に天が登場するシーン。TVアニメ版では徐々に音声にノイズを加える演出だったが、劇場総集編では、最初から夢であることを音で伝える設計に変わっている。
ここで、一織と三月が「TODAY IS」をバックに涙を流すエンディングについても言及された。
この場面、ファンなら一織がテレビ撮影で歌えなかったパートを歌っているのには気付いただろう。作中の随所で流れる楽曲のインストにもそのパートのアイドルのセリフが重なるように調整している箇所があり、濱野は「ファンなら親の声より聞いている歌。このセリフのタイミングでこの歌詞がよぎるだろう」との狙いがあると明かした。
さらに、下岡から促された別所より、こんな裏話も。
高熱の天を抱えた環が「王様プリン21個です」と伝えるシーン。大和の「増えてんじゃねぇか」というセリフの後に、ナギが「Plus One」と呟くが、実はこれ、テストのときに六弥ナギ役の江口拓也によるアドリブとのこと。別所曰く、「面白かったので、いいんじゃないのと。尺が足りなければ足すから」とその場でOKを出し、劇場総集編にもしっかり残ったという。これを聞き、会場からは驚きの声が上がった。
【後編】の見どころについて、別所は「メインタイトルが出るところ」とコメント。撮影監督である津田の活躍もあり、とても良い仕上がりになっているそうで、「ぜひ注目してほしい」と語った。
音響を担当した濱野と大寺としては、「 “前列”での鑑賞」がお勧めとのこと。とある場面でみずみずしい音響を堪能できるそうだ。
トークの熱気が冷めやらぬまま、イベントはいよいよ終盤へ。最後は、大寺、濱野、別所、下岡の順にファンへのメッセージが届けられた。
下岡は感無量の面持ちで客席を見渡し、「スタッフ舞台挨拶大感謝」と書かれた応援うちわを見つけると、「こちらこそありがとう!」と満面の笑みで応えた。そして、「今後も機会があれば、こうしたイベントを続けていきたいと思っています」と語ると、「引き続き『アイドリッシュセブン』の応援をお願いします。そして、【後編】も劇場でお会いしましょう」と力強く締めくくった。
スタッフ陣の熱い想いが凝縮された『アイドリッシュセブン First BEAT! 劇場総集編 前編』は、劇場という空間でこそ真価を発揮する映像と音響で、「はじまりの物語」を鮮やかに描き出している。作り手の情熱を、ぜひ引き続き劇場で体感してほしい。なお、【後編】は2025年12月5日(金)より全国の映画館で公開予定だ。彼らが織りなす感動の軌跡に、引き続き注目していきたい。